もりのきBLOG「おそらくはそれさえも平穏な日々」 旅の家 北海道・小樽 杜の樹より

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| The Otarunai Backpackers' Hostel MorinoKi |
群来蕎麦 22:47
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     私のそば打ちの師匠が考案してくれた「群来(くき)蕎麦(そば)」を、うちで初めて作ってみたのは3月のことだ。往時ほどではないが、小樽にたくさんのニシンが戻って来るようになったのが、きっかけだった。
     素人ながら腕前はプロにも引けを取らない師匠が考案したのは、「ニシンそば」のアレンジで、ニシンの産卵で海が乳白色に染まる「群来」を、すりおろしたヤマイモで表現した。ニシンの甘露煮ととろろが思いのほかマッチして、実においしかった。
     その後、小樽産のニシン、ヤマイモ、水を使って試作を繰り返した。現在、ソバも育てている。秋には、そのソバ粉で打つことができる。小樽の山と海の幸を水でつなぐ群来蕎麦。作って楽しみ、食べて喜びたい。
     先月、有志が集まり、ニシンをコンセプトに小樽の魅力を発信しようと「鰊(にしん)プロジェクト」を発足させた。ニシンを通して自然環境を考え、歴史と文化の伝承、地元の食材の発掘と紹介などをしながら、地域と人々との輪を形成していこうと考えている。
     その初回に「群来蕎麦を楽しむ夕べ」と称してお披露目会を行った。群来蕎麦は好評で、ニシンをテーマに大いに語らうことができた。いつの日か「群来蕎麦」を、小樽を代表するそばにしたいと思う。

    2009年7月13日 北海道新聞(朝刊)「朝の食卓」 より
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    秘密基地ふたたび 09:01
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       カナヅチでトンカントンカンとしていて、ふと思った。「これは秘密基地だな」と。
       いま築五十年ぐらいの古い家を自分で直している。「ここに窓を作ろう。床は板張りにしよう。」と、図面もなく思いつきのままリフォームしている。ただし、あまりお金をかけられないので、古材を使い、中古品を探し、できる限り今あるものを有効利用している。
       子供の頃に作った秘密基地は空き地の土管や立ち木をそのまま使い、あとの材料はその辺から拾ってきたり、家からこっそり持ってきたりと、子供ながら知恵を絞っていた。どう考えても、今やっていることもそれほど変わらない。
       新しい家を造るのではなく、古い家を直して使うことは、まるで考古学のようで、以前住んでいた人はこの部屋はどう使っていたのだろうか?この壁はどう作られているのだろうか?床下には何が?などと想像が膨らむ。実に楽しい遊びだ。
       ただ、子供の時のようにひと夏で忘れ去られ、朽ちていく秘密基地では困るので、ある程度耐久性と快適さがある住空間にしなければならない。
       古いから、不便だからといって新しく買い換えたりしないで、できる限り自分で直し、歴史を感じ、親しみを持って、長く使うことが僕は好きである。

      2009年6月3日 北海道新聞(朝刊)「朝の食卓」 より



      ボツにした最初の原稿・・・

      再利用

       地デジ対応テレビやエコ家電、エコカー、エコ住宅と買い換えを迫られている気がしてならない。どうもエコという名を利用した景気対策ようにも思える。
       ニュージーランドにいた頃、よく見かけたのはセカンドハンドショップ。いわゆるリサイクルショップだ。日本のとは比べモノにならないぐらい、商品の質は悪いが、ありとあらゆるものがあった。廃車から取った車の部品から、家のドアや窓、さびた釘やベッドのスプリング、映るどうかわからないテレビや型の古い家電など。それらは店だけでなく毎週末開かれるフリーマーケットなどでも買うことができた。そして、そういった中古品で車を直したり、家を建ている人も少なくなかった。
       今僕は築50年以上の古い一軒家を自分の住居用にと自分で直している。リフォームにあまりお金をかけられないので、中古品を探すが、ニュージーランドのように簡単には見つからない。あったとしても中古品の割には高いこともある。仕方がないので、手元にあるものや古い家から取り外したもの、新しく買って来たものを使い作業することにした。古いからといって簡単に買い換えたりしないで、できる限り自分で直し、親しみを持って、長く使うことが、僕には性に合っている。
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      春告魚 09:39
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         今年はニシンが豊漁とのニュースを何度も見る。約六十年ぶりに小樽の海岸でもニシンの産卵により海が乳白濁色に染まる群来が見られた。もちろん私は昔の群来を見たことはないので、生まれて初めて目にする光景だ。しかしながら、今年は豊漁といっても、最もニシンが捕れたときは今年の約五百十倍の漁獲高というから、そのすさまじさは想像だにできない。海岸がニシンで盛り上がりその上を歩いたなんて話も聞く。
         先日、大正九年に作られた黒輪島塗のお膳でニシン料理をいただく機会に巡り会えた。昔ニシン漁で栄えた網元の屋敷で使われていた何十脚ものお膳を蔵の中で発見し、忘れられ埃まみれになっていたものをもう一度活用しようという試みである。幸運にも保存状態がよかった。現在同じ物を作ろうとすると一人分のお膳セットは三百万円もかかるとのことだ。初めて目にする高級お膳に旬のニシン料理が並べられ、ついつい緊張してしまったが、酒が進むに従って、会話にもはずみ鰊や当時の北海道の話に耳を傾け楽しく美味しく勉強になるひとときを過ごした。
         ニシンは漢字で「春告魚」とも書く。昔のような大漁でないにしても、このニシンの群来の再来が、北海道の春を告げる風物詩として再び定着して欲しいものだ。

        2009年4月24日 北海道新聞(朝刊)「朝の食卓」 より
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        難しきことを面白く 09:34
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           「日本語って難しいですよね」と外国人に言う日本人がいる。自分が話している言葉が本当に難しいのであろうか?
           僕は日本語を教え始めてかれこれ十年になる。日本語教師の資格を取ってから数年日本語学校で留学生に教えていた。今は宿の仕事の合間で日本語の個人レッスンをしている。生徒は現在5名ほど。市内に住んでいる外国人もいれば、隣町から通ってくる人もいる。上達の早い人もいれば、ゆっくりの人もいる。会話主体や日本語検定など目的もさまざまだ。もう二十年以上日本にて会話には問題ないが、読み書きがほとんどできない人もいる。
           授業で学習者は「難しい」と口にするが、僕は決して「日本語は難しい」とは言わない。学習意欲を損ねかねない。だからといって「簡単」とも言わない。実際に簡単ではないから。「難しい」と頭を抱える彼らに僕は「面白いでしょ」と言うようにしている。「難しい」ところも「面白い」と思えるように、できる限り分かり易い例えをあげて教えるようにしている。「難しい」部分をうまく説明できたときは実に楽しい気分になる。
           実際に難しいのは「習う」ことではなく「教える」方なのかもしれない。でも、教える人が「難しい」と手を挙げてはいけない。そこにこそ面白さを見出したいものだ。


          2009年3月13日 北海道新聞(朝刊)「朝の食卓」 より
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          18:16
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             一杯のコップの水を、他の人のコップに分けていくと、水の量は減ってしまう。ところが、キャンドルからキャンドルへ火をつけても、明るさが減ることはない。灯が二つになるだけだ。
             当たり前のことではあるが、自分から差し出したものが、減らずにそのまま伝わり、増えていくというのは、案外少ないのではないだろうかと、スノーキャンドルを作りながら思った。
             今年もろうそくの灯で雪の小樽の街を照らす「小樽雪あかりの路」が十五日まで開催中だ。
             市内はもちろん国内外から集まった多くのボランティアによってキャンドルがともされた小樽運河や旧手宮線の会場には連日、多くの人々が訪れている。
             メーン会場もいいが、個人的には一般家庭の玄関先にひっそりとともされる小さなスノーキャンドルが好きだ。
             町おこしのイベントは、いかんせん観光客向けになりがちだが、イベントは、そこに住んでいる人々が楽しんでこそのものだ。
             だから、まず自分たちが楽しみ、その灯を通りすがりの人に分け与える家庭のスノーキャンドルが、雪あかりの路の本流なのだと思う。
             ボランティアや人々の思いを包んだキャンドルの灯が、今後も減ることなく、次々とともされていってほしい。


            2009年2月6日 北海道新聞(朝刊)「朝の食卓」 より
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